11/17(日)に、ピッコラーレ5周年の集大成として、「誰も一人にしない~つながり続けるためにあなたとつくる『project HOME』~」を開催しました!
イベントレポート【前編】では、
1.「ぴさら」ポスター展示
2.「ピコの保健室」体験ブース
3.「ぴこカフェ」体験ブース
の当日の様子についてお伝えしました。
今回のイベントレポート【後編】では、
1)ピッコラーレ代表 中島かおり×NPO法人PIECES代表理事 斎典道さんのトークセッションと10年後の未来に向けた会場全体でのディスカッション
2)「ぴさら」卒業生へのクリスマスプレゼント募金
についてお届けいたします!
1)ピッコラーレ代表 中島かおり×NPO法人PIECES代表理事 斎典道さんのトークセッションと10年後の未来に向けた会場全体でのディスカッション
本イベントのメインパートである、ピッコラーレ代表理事の中島×協働団体であるNPO法人PIECES代表理事の斎典道さんとのトークセッション!
ここでは、project HOMEの5年間を振り返り、ピッコラーレやproject HOMEが大切にしてきたことや、これから実現していきたい未来像を会場全体で分かち合いました。
その後、参加者一人ひとりが「立場」や「役職」を一旦脇において「一市民」として対話し、これから育んでいきたい社会に対して、自分がどのような行動をとることができるかを考えました。
1.「ぴさら」5年間の振り返り
はじめに、代表中島より「ぴさら」5年間のあゆみをスライドとともに振り返りました。
妊娠葛藤相談窓口「にんしんSOS東京」は、児童虐待で亡くなる子どもで最も多い「0か月0日死亡をなくす」ことを目標に、2015年12月に開設されました。当初は、社会資源につなげばOKと考えていましたが、相談者の方々との出会いを通じて、制度には穴ぼこ(はざま)があり、「つなぐ」だけでは孤立した妊婦を支えきれないことに気づき、相談窓口から見えてきたニーズに応える新たな仕組みづくりを社会に提言をしていく必要を感じ始めます。
相談窓口を続けていくうちに、妊娠をきっかけに今までいた場所にいられなくなったり、安心できる居場所がないがために妊娠する方々との出会いがありました。当時、孤立して漂流する妊婦に「居場所」として提供できる社会資源はほとんどなく、妊婦のために作られたわけではない社会資源に、相談者の方に合わせてもらうことでしか居場所を確保することがきませんでした。妊婦のための居場所ではないことから、何度も転居を繰り返さなくてはならなかったり、十分に心身のケアを受けづらかったりと、多くの困難にも直面しました。
「ないならつくろう」
―そうして、これまでお世話になってきた連携先の一つであり、子ども・若者の「心の孤立」を防ぐために市民育成に取り組むNPO法人PIECES*1との協働プロジェクトとして発足したのが、project HOMEでした。
「だれにとってのHOMEなのか?」
“みんな”で考え続ける場所にするために、何が必要なのか。PIECESをはじめ、中間支援団体であるNPO法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京*2などにも関わっていただきながら、さまざまな立場の方々を交えて議論を深めました。
同時に、物件探しも困難を極めていましたが、同じ豊島区内で活動する認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークのご紹介で豊島区の「地域貢献型空き家利活用事業」に登録されている物件オーナーの方と繋がり、希望通りの物件を借りることができました。
こうしてproject HOMEはたくさんの方の共感とご支援を受けて動き始め、ついに2020年春、HOME第1号の「ぴさら」が誕生したのです。
HOMEがあることで、「別の未来がある」という漠然とした希望ではなく、もっと具体的な希望が持てるのではないか…「ぴさら」では、「利用者さんのHOME」にするために、その人が何に困っているか?を大事にしていると言います。
また「ぴさら」は、おかげさまで5年目を迎えましたが、昨年度、「にんしんSOS東京」への相談のうち居住が不安定な方からの相談、また連携先から「ぴさら」に入った利用問い合わせの相談は75件もあり、安心して妊娠期を過ごせる居場所を必要としている方に対して、社会的な受け皿が全然足りていないという現実が明らかになっています。
そこで、全国で同様の取り組みをしている団体と手を携え「妊娠期の居場所を考える共同勉強会」を4年ほど前から開始。支援の現場でうまれる困りごとを共有したりしながら、お互いをエンパワメントし合えるネットワークを構築しています。
斎さんからは「5年経って少しずつ景色が変わってきている。ようやくここから“できる”と感じている。各地の仲間と手をたずさえながら、そして、市民と対話したり内省を重ねながら、ピッコラーレだけが頑張らなくていい文化や仕組みを作っていきたい。」と力強いコメントをいただきました。
*1 NPO法人PIECES(https://www.pieces.tokyo/)
子ども・若者の「心の孤立」を防ぐために、領域やセクターの壁を越えたコラボレーションを通じて、子どもとその環境を織りなす人との「間(ま)」を豊かにするための市民支援者育成事業等に取り組まれています。
*2 NPO法人SVP東京(ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京)(https://svptokyo.org/)
SVP東京は、社会的な課題の解決に取り組む団体や事業に対して、資金の提供とパートナーによる経営支援を行っているNPO法人です。ピッコラーレは、(前身団体である一般社団法人にんしんSOS東京として)2019年度から2年間、協働団体としてサポートをしていただきました。
2.10年後の未来に実現していたい社会像
「未来語りのダイアローグ」として登壇者の2人が“10年後の自分”になり、いま(10年後)社会の様子を語り、10年前(本イベント当日)の社会からどのように変容していったのかを未来の視点から振り返りました。
トークセッションで2人が描いた10年後の社会は…
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緊急避妊薬がどこでも買えるようになっているなど、誰でも手軽に避妊にアクセスできるようになっている。
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子連れで電車に乗ると空気が温かくなるような社会。
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わざわざそのための場所を作らなくても、「ちょっと助けてくれる場所」ができ、まちのみんなで取り組むのだけど、みんなで振り回されている、そんな社会。
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10年前(現在)、“ふつうの人”たちから見えなかった利用者さんが、支援―被支援の関係を超えて資質やキャパシティもいかしながら困難を持ちつつも地域で生きている。ピッコラーレの中にいて、一緒に活動し、地域の人も助かっている。
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支援を必要とする人との出会いの場が勝手に広がっていき、「ビジネス」としてではなく「私」として知り合うことができる。「ビジネス親切」ではなく、「私」として興味を持ち、対話をすることができる。
そんな10年後の社会に変容するまでに…
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「これは大変、あれは大変」と、妊婦のしんどさをまちに開いていった。
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市民は「何をしたらいいかわからない」「何もできない」と思っていた状況を乗り越えている。
10年後の未来は、「包括的性教育がランチの話題になっている(中島)」。「法や制度を整えることも大事。一方で、一人ひとりが作っている日常やまなざしの変容が必要で、より多くの人に伝わるように、ライトな入口を日常の中につくっていきたい(斎さん)」
一人ひとりの孤立した妊婦に向ける「まなざし」自体が温かく、優しいものに変容している社会を作っていきたい…そんな思いが2人からはあふれていました。
3.10年後の未来に向けた、会場全体でディスカッション
中島と斎さんのトークセッションを受けて、参加者一人ひとりが10年後の社会に生きる自分になることで実現したい未来を思い描き、そのためにどのようなアクションが必要かを考え、参加者同士のビジョンを共有しました。
「10年後、私は何歳…?ウチの子は何年生…!?」といった声も会場からは聞こえつつも、
参加者の方からは、
「今よりも充実した性教育ができている」
「思いがけず妊娠したことを隠さなくてよくなっている。そのために、誰もが経験するかもしれないことであるという認識が浸透していて、相談ができることをみんなが当たり前のように知っている」
「子どもを産まない選択をした人も、一緒に子育てをする体験ができている」
「ピッコラーレをモデルにしたい団体が出てきたときに、中間支援団体としてマニュアルを配付したり、質問に対応することができている。地域の人が家を持ち回りで開放して居場所を提供する”ぴさら@my home”とか“ぴさら@じぃじ&ばぁば”なども面白そうだ」
「避妊方法が多様化していて、避妊失敗率がゼロになっている」
といった未来図が語られました。
10年後は…
「半分頑張る、“半頑張り”の状態。となりにいる誰かが、もう半分を頑張ってくれ、SOSを出す人たちを支えている社会」
「彼女らと自分の“ちがい”をおもしろく、愛おしく思える社会」
そんな社会を作っていきたいと、中島のコメントでこのセッションは幕を閉じました。
4.東京都「妊産婦等生活援助事業」補助事業者決定のご報告
これまでピッコラーレは、「ぴさら」を助成金や皆さまからの寄付で運営しながら、制度作りに携わっている皆さんに、制度のはざまに落ちてしまう若年妊婦について、有識者会議や関係省庁等によるヒアリングの場でお伝えしてきました。
そしてついに、2024年度の改正児童福祉法で「妊産婦等生活援助事業」が創設され、東京都も今年度から事業化することを決定しました。
イベントでは、今年10月、ピッコラーレはこの事業の補助事業者として選定されたことを、皆さまに直接ご報告することができました。
「ぴさら」を運営していくなかで、次々と新しいニーズが生まれてきており、アフターケアや包括的性教育の啓発事業など補助対象外の事業については、引き続き、助成金や寄付で実施していくことになります。今後とも、「ぴさら」をはじめとするproject HOMEに注目していただき、応援していただけますと幸いです!
2)ぴさら卒業生クリスマスプレゼント募金
ピッコラーレでは、毎年「ぴさら」を卒業して地域で生活している方々のために、クリスマスプレゼントを贈っています。
これまでも、皆からいただいたご寄付でプレゼントを贈ってきましたが、今年はイベントでクリスマスプレゼントを贈る資金のご支援を募り、おかげさまで、73,263円の募金をいただきました。本当にありがとうございました!
これらはすべて、卒業生へのクリスマスプレゼントに使わせていただきます。
プレゼントを通じて、皆さまの温かいお気持ちと「ひとりじゃないよ」というメッセージを伝えられることが、とても嬉しいです。
また、クリスマスギフトに関するご報告を参加者の皆さまにさせていただく予定ですので、楽しみにお待ちくださいね☆
大盛況のうちに幕を閉じた5周年イベント。皆さまに少しでも熱気が伝わったら嬉しいです!
ご参加いただいた皆さま、イベントの運営にかかわってくださったすべての皆さま、イベント当日も別の場所で活動を支えてくださった皆さまに心から感謝いたします。
本当にありがとうございました!
おかげさまで、11月21日にピッコラーレは6周年を迎えました。
また、今月は「にんしんSOS東京」の相談窓口開設から9周年を迎えます。
これからも、みなさまの温かい応援・ご支援をどうぞよろしくお願いいたします!