令和6年4月に施行される改正児童福祉法において「妊産婦等生活援助事業」(以下、同事業)が新たにスタートします。同事業の開始を前に、妊産婦等の生活支援や居場所づくりのこれまでの取組みやこれからの課題や展望について、セクターや団体・機関等の壁を越えて共に学び、考え、対話する機会を設けたいという想いから、2024年2月24日に協働団体の皆さんと一緒に「妊娠期の居場所づくりシンポジウム」を開催しました。

当日は、短い告知期間であったにもかかわらず、北海道や東北、九州など遠方からの参加も含め、100名近い参加者・関係者が会場に集まり、その関心の高さを肌で感じる時間となりました。

会の前半は、同事業の所管省庁であるこども家庭庁の後藤博規氏から、創設の背景や目的、事業の全体像などについてお話がありました。その後は、同事業が法定化される以前から、妊産婦の孤立を防ぐための居場所づくりに取り組んできた3団体(公益社団法人小さないのちのドア;兵庫県、こどもと女性包括支援センターhalu;福岡県、認定NPO法人ピッコラーレ;東京都)から、これまでの実践を振り返っての報告がなされました。
ピッコラーレからは、project HOMEの取組み、ぴさらでの実践を通して受けとってきた利用者の声、この取組みが存在することの意義、そして約4年間の取組みを通じてみてきた現状の課題などについて報告を行いました。

 

会の後半では、上記登壇者に加え、同事業の予算事業化・法定化に尽力くださった、こども家庭庁の胡内敦司氏も交えて、パネルディスカッションを行いました。

今回のシンポジウムの開催にあたって大事にしたことの1つに、「目の前にある痛みや困難が大きい取組だからこそ、どうしても課題に目が行ってしまうが、今回関係者の努力によって法定事業として位置づき、新たなスタートラインに立てた喜びを分かち合う機会にしたい」という想いがあります。そのため、そもそもどのようにして今回の法定化に向かう動きが始まったのか、また、この一連のプロセスにおいて関係者それぞれがどのような想いを込めて進めてきたのかを、各登壇者が共有するところからスタートしました。少子化が進む一方で、子どもの虐待死亡事例が一向に減少しない現実、既存の枠組みではどうしても支援が途切れてしまう妊産婦支援の現状や無念さ、枠組みがない中でも様々な関係者に協力や寄付をお願いしながらなんとか活動を継続してきたことなどが語られていきました。

一方で、それらの痛みや困難があったからこそ、同事業が法定化されたことの意義がとても大きいこと。そして、法定化が進む中で、それまで理解が乏しかった自治体関係者が前のめりな姿勢になったり、地域を越えて仲間が増え始めたりといった希望も感じているという声も、パネルディスカッションでは挙げられていました。

今後、同事業をより効果的に実施していくためには、住民票が当該自治体にない方の広域的な受け入れをスムーズに行えるようにすることや、安定的な運営のために同事業の予算だけではカバーできない部分をいかに確保するか、緊急期の支援から安定的・自立的な生活再建までを複数のステークホルダーと一緒に協力する仕組みをどのように作っていくか、など多くの課題が山積しています。

だからこそ、今回のシンポジウムで生まれた希望やつながりを大事にしながら、多くの仲間と共に今後も妊産婦にとっての安心できる居場所や環境づくりに取り組んでいきたいと思います。

これからも、社会の様々なステークホルダーのみなさんと一緒に対話できる機会を作っていく予定です。ぜひ引き続き、関心をお寄せいただけますと幸いです。

<参加者からの感想(一部抜粋)>
「この集まりが多方面からの集合であることは、本当に意義深いことと思いますし、学会などではなかなか実現できないことと思います。それぞれの団体の方の、まっすぐな思いに涙が出るほど感動し、社会への信頼、人間への信頼を改めて実感できました。このつながりを作ってくださった方々に心から感謝いたします。」
「支援団体の方の生の声、支援団体と他関係機関との連携の現状、また、都道府県と国それぞれのレベルに所属される方からお話しして頂き、多方面から本事業を捉えることができました。どの言葉も貴重で、聞き逃すまいと頭をフル回転させながらお話しをお聞きしておりました。大変勉強になりました。ありがとうございます。」
「大変有意義なシンポジウムでした。ありがとうございました。スタートはこれからですが、つながりづくりは継続して欲しいです。それぞれ地域に戻られてあったかい想い支援が全国に広がっていってほしいですし、私も取り組んでいきます。」

 

<Special thanks>
今回のシンポジウム開催にあたっては、多くの個人・法人の方々にお力添えをいただきました。あたたかな応援の想いやメッセージとともに会の実現をサポートくださり、本当にありがとうございました!

▼会場提供
アステラス製薬株式会社様

▼ご寄付
・タレント 福田萌 様
・Raymond Wong 様
・moneレディースクリニック江戸川 様
・リコージャパン株式会社 様
・株式会社ピオーネ 様

・その他、当日参加者からのご寄付(38,309円)

▼主催
妊娠期の居場所づくりについて考える共同勉強会(下記、参画団体)
・社会福祉法人 大念仏寺社会事業団 ボ・ドーム ダイヤモンドルーム
・沖縄の特定妊婦の出産を支える宿泊施設「おにわ」
・公益社団法人小さないのちのドア
・社会福祉法人慈愛会 女性自立支援施設 慈愛寮
・社会福祉法人豊生会 こどもと女性包括支援センターhalu
・認定NPO法人10代・20代の妊娠SOS新宿ーキッズ&ファミリー
・社会福祉法人 麦の子会 にんしんSOSほっかいどうサポートセンター
・認定NPO法人ピッコラーレ ※事務局
・認定NPO法人PIECES