「2022年度 活動報告書」が完成いたしました!

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「にんしん」が困りごとになる社会のその先へ

代表理事 中島かおり

お待たせいたしました!2022年度の活動報告書をこうしてまたみなさんにお届けできることをピッコラーレのメンバー一同、とても嬉しく思います。

2022年12月、にんしんSOS東京は8年目を迎えました。 開設以来365日休むことなく窓口を開き続けることができたのは、ピッコラーレの活動に心を寄せ、支えてくださるみなさんのおかげです。いつもありがとうございます。心から感謝申し上げます。

2022年度、にんしんSOS東京の窓口では、緊急性が高く難しい判断が必要になることが何度もありました。
初回相談から何度もやり取りを続けようやくお会いできた方が、面談の最中に陣痛が始まりそのまま一緒に病院に駆け込み、ギリギリのタイミングで無事に出産となって相談員みんなでホッと胸を撫で下ろしたことも。ハラハラする出来事が次々に起こる中、本人だけでなく、私たちも選択と決断の連続で、その度にどうしたらいいのか迷い、悩みながら目の前の相談と向き合いました。

妊婦を孤立させない、漂流させないため、「ないなら作ろう」、そう考えて始まった若年妊婦の居場所「ぴさら」もこの夏4年目に入りました。当たり前だと考えられている妊娠出産の制度やケアが、時には「ぴさら」にいる彼らを追い詰めてしまうことを知り、自分たちが考える「当たり前」を変化させる必要に迫られ、その度に戸惑った毎日でした。また、利用者のほとんどが10代を占め、壮絶な背景を持ちながらなんとかこども時代を生き延びてきた彼らの隣で私たち自身がどう在るのか、そんな問いを重ねる日々でもありました。

これらの現場運営と並行し、研修や講演、政策提言を通じて、これまでともすれば「透明人間」にされてきた方々の声を可視化し、市民や行政に届け続けた1年でもありました。

大変な1年だった! というばかりではありません。変化の兆しが見えてきた1年でもありました。
そのひとつが「妊産婦等生活援助事業」です。 この事業は、「ぴさら」の実践がモデルとなり、令和6年度に予定されている児童福祉法改正の中で新しい制度として 位置付けられることになっています。2022年度は同様の取り組みをする全国の仲間とのネットワークも生まれました。この制度がどの地域でも利用しやすいものになるよう、 一緒に声を上げていくことを計画しています。

とはいえ実際には、制度や法律だけで「にんしん」が困りごとになる社会を変えることはできません。
依然として緊急避妊薬のOTC化も叶わず、中絶薬へのアクセスの課題や包括的な性教育へのバックラッシュも起きている中、性と生殖の健康と権利、sexual reproductive health and rightsをどうしたら大切にすることができる未来がくるのでしょうか。

私たち一人ひとりが妊娠出産のあらゆる場面での権利の主体であり、それぞれの選択が尊重され、「自分の身体は自分で決める」ことができる社会にはまだ遠く途方に暮れるような気持ちにもなります。具体的な伴走支援をしながら、社会の空気やひとりひとりの眼差しを妊婦に優しいものに少しずつ変化させていくのはとても難しい事ではありますが、「にんしん」が困りごとになる社会のその先に向けて、私たちはこれからも歩みを止めるわけにはいきません。

妊娠中から産後1ヶ月ほどの期間のソーシャルワーク、居場所やケアの提供にとどまらず、地域での生活を始めた元相談者さんやその子どもたちのアフターケアのニーズにどう応えるかなど、4つの事業の中で発見した新たな課題への挑戦が今後も続きます。

こういったピッコラーレ全体の事業にかかる費用は立ち上げ当初から比べ大きく増加し、ここまでの歩み、そしてこれからの歩みの全ては、ピコサポ(マンスリーサポーター)や賛助会員、法人会員の皆さんなど寄付者の皆さまによって支えられてきました。

制度の狭間に取り残される方を継続的に支援するには、持続可能な運営を目指す必要があります。
そのためのひとつのアクションとして、ピッコラーレは東京都へ認定申請を行い、2022年12月6日付で認定NPO法人となりました。これをきっかけにさらにご寄付で支えてくださる仲間を集め、ビジョンの実現を目指します。

「ぴさらを作ってくれてありがとう」

ある卒業生がぽつりと言ったこの言葉をみなさんはどのように受け止めるでしょうか?
ひとりぼっちで取り残されている方にとってみなさんの存在は、社会への信頼につながります。自分の持つ力を信じ、応援してくれている人が どこかにいる、「ここにいていいんだ、生きていていいんだ」そんなふうに思える未来を一緒に作りましょう。

「にんしん」が困りごとになる社会のその先へ。
「にんしん」をきっかけに、誰もが孤立することなく、自由に幸せに生きていくことができる社会を。

これからもピッコラーレへの応援をどうぞよろしくお願いします。

 

※本来ならば、こちらの「2022年度ピッコラーレ年次報告書」に、昨年実施したクラウドファンディングで「E:2022年度年次報告書にお名前掲載」コースにご寄付いただいた皆さまのお名前を掲載するべきところ、制作段階での確認漏れによりお名前が掲載されないまま発行に至ってしまいました。
せっかく温かいご支援をしていただきましたのに、本当に申し訳ございません。今後、団体内での体制を見直し、同じようなことが起きないように努めてまいります。
深くお詫び申し上げますとともに、こちらのページにてお礼とお名前を掲載しております。改めまして、このたびはあたたかいご支援をいただきありがとうございました。