ピッコラーレは2021年度より、若年妊婦の居場所支援を行なう団体とゆるやかにつながり、交流や意見交換会などを目的とした共同勉強会を開催しています。2022年度は参加団体も増え、ピッコラーレを含め7団体で勉強会を継続しています。今年度第一回目の共同勉強会を8月に開催しましたので、当日の様子をレポートします。


            2022年度第1回共同勉強会                    

8月2日に、若年妊婦の支援を行う7団体で、2022年度第1回共同勉強会を開催しました。

共同勉強会は、昨年度にピッコラーレを含めて3団体ではじまり、今年度は7団体に広がって年間3回ほど実施していく予定です。

第1回では、各団体の紹介と現在抱えている課題の共有を行いました。
zoom配信での開催になりましたが、約30名の参加者の間で温かな雰囲気の中進められていきました。それぞれの団体の紹介からはじまり、現在抱える課題やそれについて思うことなど活発に意見があがり、1時間半の予定時間があっという間に過ぎてしまうほど有意義な時間となりました。日頃の支援の中で感じるさまざまな思いを共有することで、お互いがエンパワメントされる時間にもなりました。


★共同勉強会って?

共同勉強会では、若年妊婦の支援活動に取り組む各地の団体が、組織や地域の枠を越えて交流しています。また、以下の目的を持ってネットワークを強めていくことを目指しています。

  •  制度の狭間に陥りがちな若年妊婦を、現行の縦割り制度の弊害を取り除きながら社会として手厚く支えていくために共に声をあげること
  •  ミクロのケースレベルから場の運営、地域との関わり方、資金調達・予算折衝に至るまで、何か課題に直面したときの助け合い、支え合いができること

さらに、日頃の支援の中で感じるさまざまな思いを安心して話すことができることによって、支援者の方々にとっての「癒しの場」として機能することを目指しています。共同勉強会を通して互いに励ましあい、明日の支援の活力を高めることで、若年妊婦のより良い支援につなげていきます。


★2022年度 参加団体(順不同・敬称略)

  •  NPO法人10代・20代の妊娠SOS新宿-キッズ&ファミリ-
  •  社会福祉法人麦の子会 にんしんsosさっぽろ
  •  大阪市産前・産後母子支援事業 ボ・ドーム ダイヤモンドルーム
  •  社会福祉法人福岡県母子福祉協会 産前・産後母子支援センター こももティエ
  •  社会福祉法人慈愛会 婦人保護施設 慈愛寮
  •  公益社団法人小さないのちのドア
  •  NPO法人ピッコラーレ


現在抱えている課題について

若年妊婦の支援の現場で抱えている課題について、主に以下の①~④が共有されました。

①個別的な対応に関する課題

妊産婦の支援では、妊婦と産婦といった妊娠出産の経過に応じた対応や、出産するか否か、自分で育てるか否かなど妊産婦の選択に寄り添った対応の必要性を感じています。また、妊産婦の中には、虐待や養育困難などの背景や精神疾患を抱えている人もおり、それぞれの状況によって個別的な対応が必要だと感じています。しかしながら、支援の現場では、施設設備や人員配置、資金不足などの事情により、個別的な対応がうまく進まない課題があります。

 ②継続的な支援に関する課題

妊産婦の支援では、妊娠出産の支援によって信頼関係を築けた支援者が、親子再統合や自立の支援まで長く関わっていくことの必要性を感じています。また、一つの場所で継続的に支援を行うことで、妊産婦の安心・安全につながる実家的機能をもつことが必要だと感じています。しかしながら、支援の現場では、妊娠SOSでつながった妊産婦を母子生活支援施設などの他機関につなぐことが多く、複数の場所で途切れ途切れの支援となっています。また、母子生活支援施設では、各自治体が定める在所期間の事情により、2年や長くて3年など子どもが小さいうちに退所して暮らしていかなければならず、継続的な支援がうまく進まない課題があります。

 ③支援を行う資金調達に関する課題

現在は、団体によって行政からの委託費や、民間財団の助成金、団体の活動を応援する方々の寄付金などを資金として活動していますが、妊産婦に個別的な対応や継続的な支援を行うためにそれらは十分であるとはいえない状況です。また、妊娠出産に関わる費用は、初診や妊婦検診、出産費用など多岐にわたり、妊婦の中には経済的に困窮している人も少なくありません。このような特定妊婦に対して適切な支援を届けるために、妊娠出産に関わる費用が公的に負担されることの必要性を感じています。しかしながら、特定妊婦に対する支援の公的予算は十分ではなく、支援を行うための資金調達がうまく進まない課題があります。

 ④行政や他機関との連携に関する課題

個別的な対応や継続的な支援、支援を行う資金調達のためにも、厚生労働省や子ども家庭庁、都道府県、市区町村などの行政、母子生活支援施設、婦人保護施設などの他機関と連携していくことの必要性を感じています。行政との連携では、厚生労働省が2019年に「特定妊婦等に対する産科受診等支援」、2020年に「若年妊婦等支援事業~不安を抱えた若年妊婦等への支援~」など事業を立ち上げましたが、事業の活用が不十分であることも含め、未だ特定妊婦に対する支援は十分であるとはいえない状況です。また、母子生活支援施設との連携では、医療職の配置や夜間の人員配置などの事情や、未受診である妊婦の対応の不安などにより、施設ごとに妊娠期の受け入れやすさに差が生じています。婦人保護施設との連携では、入所のしくみが厳しいため利用しづらさがあります。これらにより、行政や他機関との連携がうまく進まない課題があります。


第1回共同勉強会を通して、妊娠に葛藤する女性やその子どもによりよい支援をするためには、1つの団体が声をあげるだけでなく、関連団体が一体となり声を上げていく重要性が考えられました。

今後、共同勉強会では、妊産婦の支援の現場で抱えている課題や様々な意見をふまえて、若年妊婦のより良い支援に向けて協働していきます。第2回共同勉強会は、11月頃に開催予定です。